気持ちの悪いニュース

なんと気持ちの悪いニュースだろう。
秋篠宮の奥さん、紀子さんの懐妊ニュースのことである。
懐妊自体は、子供の誕生であるから、それは誰であってもおめでたいニュースである。
問題は、まわりの反応だ。
今回のニュースは、国会で皇室典範改正が論じられようとしている時のニュースであり、そのニュースに対してこれまで以上に盛り上がっている背景に男子待望論があるのは、自明のことである。
当たり前のことだが、子供がどういう性別で生まれてくるかはわからない。
本当に、ある特定の性別で誕生させたいのであれば、人工授精などで意識的に性別を操作することも可能かもしれないが、それは論外であろう。
皆が、男子を期待する。
そして、生まれてくる子供が女子であった場合、それでも皆は「おめでとうございます」と祝福するであろうが、それは同時に「でも、男子であったらもっとおめでたかったのに」という括弧付きでの「おめでとう」でもある。なんと、気持ちの悪い話だろう。
秋篠宮の2子は思うだろう。自分たちが、期待を裏切る形で生まれてきた存在であるということを。そして、浩宮の子供、愛子さんももちろん。

男系という発想は、他の婚姻制度と同様、その社会制度と密接に結びついている。特に皇室の場合、後宮が存在するというのが前提であり、そこには当然、女は借り腹にすぎないという考え方が存在する。
男が種を植え付けて、その種から生まれた世継ぎをあとへとつなぐ。
この際、女の身体は、新しい世継ぎを胎内で育てる場所として考えるだけであり、両性の結び付きによる対等な次の世代の育みという発想とはかけ離れたものである。そして、ご存じのように、旧民法においては、女性の存在はそういうものであったのだ。

今回のニュースに関するみんなの声。
「おめでたい」「うれしいですね」「久々にいいニュース」「皇室典範改正に関してもう一度考え直さないと」
このニュースがこれほど注目されている意味を深く考えずただ素直な感想として答えているだけのことと言えば、それはそうなのであろうが、その背景に「女の身体は男の後継ぎを産むための装置である」という思想が含まれているということを意識せずに答えているとしたら、それこそおめでたい話である。
また、意識してそのような発想を持っているとしたら、それは本来、糾弾されるべき発言であろう。