トキの保護と皇室典範改正

今回の皇室典範改正の話は、いわば、「トキの保護」の話に近い。

秋篠宮誕生以来、40年間、皇室に男子が生まれていない。このままでは皇統が耐える」ということが、皇室典範改正の趣旨だが、それは、「このままでは、トキが絶滅してしまう」というのと同様な話である。
トキの場合、中国からトキを迎え人工増殖を行っているが、ご存じのように日本での在来種としてのトキは、平成15年に絶滅してしまった。いわば、皇統が絶えてしまったのと同じようなこととなる。皇室の場合、その前に手を打つということであろうが、そもそも、そこまでして守る意味とは何であろうか?

万世一系
これは、トキの場合でも同様であるが、なぜ、トキだけが特別扱いされるのか?
それは、トキが、そもそも日本で多く当たり前のように棲息していた鳥であり、また、学名に「Nipponia nipponn」と「日本」という言葉が盛り込まれているという鳥であるにもかかわらず自国では絶滅に追いやってしまったという、いわば罪滅ぼしの意識から来るものであろう。今更、遅いと言えば遅いのだが。
そのような贖罪の意識がなければ、トキは本来、人工増殖を行ってまで保護する必要はない。トキという種の存続に関して何かを行いたければ、中国でのトキの保護のバックアップをすればいいだけの話で、その浮いたお金は、他の絶滅危惧種の保護にまわすというのが、本来の筋であろう。話がずれてしまった。皇室のことである。

万世一系の皇統を守るという考え方は、日本在来種のトキの系統を守るという考え方に近い。しかし、そもそも、よく考えてもらいたいのだが、今、これを読んでいるあなたの系統も万世一系のものなのである。いろいろな系統の枝があり、その中の一つに、皇室の系統があるにすぎない。
そして、もし、それでも
「いや、皇室だけは違う。神武天皇からずっと脈々とその系統が守られ・・・このような王室は、世界で日本だけの・・・」
なんて言う人がいるのなら、では、その皇室を成り立たせているバックボーンとなる万世一系ということ自体を、歴史的に厳密に検証すべきであろう。本当にそうであったのかを。しかし、万世一系を殊更に主張する人ほど、その検証は避けたがる。当たり前である。いくらでも叩けばほこりが出てくるのだから。そもそも、武烈天皇継体天皇の間で系統が切れてしまっていることは公然の事実であるし、そのあとの系統に関しても同様なことがなかったという証明はできない。それこそ、女系ならまだある程度精度が増すであろうが。下世話に言うと、種は誰でもつけられるのである。

そして、そもそも、系統が続いているかどうかなどということは、実は、どうでもいいことなのだ。そのどうでもいいことを制度として守ってこの先の日本という国をやっていくということが、本当に皆の幸福になることなのかどうかということを、本来、議論すべきであろう。
私の意見としては、そろそろ、終わりにしてもいい制度だと思う。天皇制は。