皆既日食中継前半NHKの一人負け・後半NHKの一人勝ち・総合優勝TBS

皆既日食
残念ながら東京は完全な曇り。
晴れ間が見えるどころか、いつ雨が降ってもおかしくない天気である。
ということでテレビで皆既日食の生中継を楽しむことに。
せっかくだから、どこの中継が一番よかったかをレポートしたい。
まず、前半。つまり、南西諸島を皆既日食帯が通過する時間。
一番、中継に成功したのがTBS。
現地ももちろん曇りどころか悪石島に至っては暴風雨に近かったのだが、現地でどんどん辺りが暗くなる様を丹念に追い、また、それを光度計などの数値的にも表していたので、何か非日常的なことが起きている気分たっぷり。カメラ位置も、人々の期待と不安、いろいろな表情をロングのカットで拾っていて、臨場感があった。
フジテレビがそれに追随。
一方、ひどかったのが、NHK。
スタジオに始終戻すため、生放送の臨場感が全くない。スポーツ放送やっているのにスタジオを映しまくるようなものである。また、屋久島の歴史や日食のメカニズムやらを、今、日食自体が起こっているのにそれを見せずに録画映像で見せる。試合の途中に選手のプロフィールを延々流すようなものである。
また、一番ひどかったのが、屋久島中継。
屋久島は雨である。
で、そこで何を映しているかというと、うっそうと茂る屋久杉の中である。
おそらく、屋久島での日食の中継ができないとなった段階で、屋久島の自然と日食へと切り替えたのであろうが、皆既日食帯に入ったときの人々の感情は屋久杉を映していても何も伝わってこない。そもそも日食は、他の自然物も敏感に感じるものであろうが、何よりも人類がそこに不吉な何かや神を感じるものである。故に、映すべきは、人々であった。
最悪なのが、皆既帯に入ったとき、高感度カメラを使ったこと。そう・・・暗闇の中でも映るようにである。バカである。映画館でフラッシュを焚くようなものだ。映すべきは光ではなく、闇なのだから。
そんな感じで、ピントはずれな中継を続け、前半戦はNHKの一人負け(ちなみに、唯一「暴れん坊将軍」の再放送をしていたテレビ朝日は試合放棄)。

さて、後半戦。
状況が一変する。
硫黄島及びその周辺海域での海上観察の船上。ここは、しっかり晴れていた。ところが、民放がどこもこの時間を押さえていない中、NHKのみが、両方とも押さえていた。
ダイヤモンドリング皆既日食もコロナもプロミネンスも、全部、NHKの独占放送。
民放は録画を流すか、硫黄島からの映像をもらって流すのみである。
NHKの放送が完璧というわけではない。相変わらずタイミング悪くスタジオに戻すし、中継もあんまりうまくない。硫黄島のスタッフがしゃべりまくるのでスタジオでマイクをもらった(奪った)ぐらいである。
ところで、不思議に思ったので調べてみたら、硫黄島は、現在、民間人は立ち入り禁止とのこと。なるほど、硫黄島ツアーというのがなかったわけだ。それにしても、それならなぜNHKだけが放送できたのか。また、NHK以外の民放が食い込むことがなぜできなかったのか。オリンピックじゃあるまいし、独占契約ということはあるまい。なぜ、NHKの独占を許したのか、これは、今後問題となることなのかもしれない(単に民放の手抜かりかもしれないが)。
というわけで、後半戦はNHKの一人勝ち。

では、総合するとどうであろう。
私は、TBSの総合優勝だったと思う。

生で皆既日食の映像を流すことができたNHKは見事であった。しかし、実は、それよりもすばらしかったのは、TBSが映し出した皆既日食時の闇の風景であった。
それは、太古の昔から人類が味わってきた、日食の気分と同じもの。そう・・・昔、人類は別に日食グラスも持っていなかったし、下敷き(ダメだとさんざん念押されていたが昔は下敷きは必須であった)もなかった。太陽が黒い太陽になるということよりも何よりも、昼が暗転し、夜となり、この世の終わりのような気分に包まれることが、まさに日食というイベントであった。
誰もいない島で空を映すカメラよりも、闇に包まれた中で人々が不安げに一瞬お互い顔を見合わせる、その時間を丹念に追ったTBSが、今回の中継でもっとも日食に迫れた局であったのではないかと思う。

今回のようなイベントの場合、言葉はいらない。
言葉が映像に負けてしまう。
民放はさておき、NHKが追うべきは、言葉ではなく映像であった。