映画音楽・映画の音楽・アニソン

NHKBSで、今日、映画音楽大全集という番組があった。
映画音楽好きの私は、それを観ながら原稿を描いていたのだが、これが画期的であった。
どの部分がというと、それは、映画音楽しかかからない番組だったということである。
映画音楽大全集だから当たり前と思われるかもしれないが、実は、そうではない。
司会の小堺一機が言っていたが、映画音楽というのはそういう1ジャンルなのである。
映画の音楽と映画音楽は違う。
そして、今、映画で使われている音楽は映画音楽ではない。映画の音楽である。
映画音楽とは、オペラの音楽が他の音楽と違うように独立したジャンルで、映画のためにどのように音楽を当てるかを模索し、また、それを専属とするミュージシャンが集った1ジャンルであった。
その流れは、もちろん今でも残っているが、微妙に違う。
番組では、1950年代から60年代の映画音楽がほとんどだったが、おそらく、この時期までの映画の音楽が映画音楽である。
70年代までは、しかし、まだ、映画音楽。
しかし、80年代以降の映画の音楽は映画音楽ではない。
そう・・・違うのだ。
映画音楽という独立したジャンルがあり、それを専属とした作曲家が映画のために何か違う形を模索した時代の音楽。
映画音楽は、70年代でほぼ終わる。だから、80年代以降の映画の音楽は一つも流さなかった。これは、卓見であろう。
また、今回画期的であったのは、日本語に翻訳された歌詞による映画音楽というものが一つも流されなかったことである。だから、全て原語。原語を歌える人のみが、歌手として登場した。
この手の番組によくある、そんなに上手くないのに担ぎ出される歌手というのが、全くなかった。原語できちんと歌える実力者のみ。これも画期的。

アニソンに関しても実は同様なことが言える。
今でも、まさにこれこそアニソンという歌がたくさん生まれている。しかし、微妙に違うという思いがないではない。確かに、今のように変化する必要はあるのだ。それは確かなのだ。
ただ、70年代までのアニメの歌は、アニソンという独立したジャンルであったのに対し、80年代以降、アニメの歌であっても、それ以前のアニソンとは何かが違う。それは、進化だけではない。
アニソンという独立したジャンルは、実はなくなってしまった。
それは、映画音楽という独立したジャンルがなくなってしまったのと同様に。

それは、歴史の必然なのだが、一体、映画音楽やアニソンが黎明期にどこに行こうとしていたかということを、検証する時期なのかもしれない。少なくとも、行こうとしていた先に、今があるというわけではないように思うのだ。

それにしても、映画音楽大全集は、いい番組であった。