本鉢・新美南吉・百姓の足坊さんの足

テレビ東京の23時からの番組「ワールドビジネスサテライト」の人気コーナー「トレたま」で、「本鉢」というのを紹介してた。
それは、古本に四角い穴を穿ち、そこに土を入れて植木鉢にするというものである。
番組の中で、「本に穴を開けるということに抵抗のある方もいると思いますが」
と言っていた。私も抵抗のある1人である。
本というのは、物体である。
購入したそれは商品で、いらなくなったらゴミでしかない。
しかし、本を粗末にしてはいけないという気持ちは、他の物品以上に強い。
そこには、人の思いが詰まっている。
もちろん、全ての商品に人の思いは詰まっているのだが、本というのは特別だと思う。
限りある命を生きることを自覚した人間が、永遠を夢見た姿。それが、書物と言えようか。
一冊一冊が、故に、人の魂と言える。
もちろん、自分も、本を疎略に扱うことはある。
というか、本の山の中で生息する身としては、それらの本に対する邪険な扱い方は、人の平均以下かもしれない。しかし、本が特別だという思いはある。
例えば、本を踏むという行為にはためらいがある。
この辺、お米に関する感情と似ているかもしれない。
新美南吉の小説に「百姓の足坊さんの足」というものがある。
ネタばれなので最後まで書けないが、この二人の足を分けるのは、お布施でもらったお米を踏むという行為を行った百姓と坊さんの、そのことへの思いの差であった。
(学校の道徳の時間でこの本を扱ったら、なかなかいろんな意見が出て面白いかもしれない。新美南吉の児童文学はそういうものが多い)
食べ物を残してはいけない。
本を粗略に扱ってはいけない。
そのような考え方の背後にあるものは、大きい。
番組の中で商品紹介の後、女子アナが、「おしゃれですね」と言っていた。
平気でこのような言葉を吐ける人間を、私は、好きではない。